マレーシアへの転勤辞令が決まり、駐在を開始してもうすぐ4年が経過しようとしています。
今回は、実際にマレーシアで駐在員として働いてみて感じたことを書いてみようと思います。
あくまで私自身が感じたことや考えたことを主観的に発信するものなので、全て駐在員に該当するものではないことと、マレーシアそのものに対する解釈の違いなどもあると思いますが、ありのままを書いていきます。
1.労働環境
日本のオフィスでの環境と異なる大きな特徴として、
- マレー系と中華系が一定数割合で所属している。
- 英語/中国語/マレー語が飛び交う。
- 日本語を意外と知っている。
- マレー系男性は、金曜日のランチ後、モスクへお祈りをしに行く。
- LineやWatsAppなどのSNSでやりとりする。そのため情報の拡散が早い。
- メールを打つ場合も非常にフランク。
- スーツは基本着ていない。(下手したらデニムにTシャツ)
- 客に対しても良い意味でドライ。
- 客に対しても対等に言いたいことを言って交渉する。
- 購買部門には女性が多く、発注金額交渉がすごい。
- ローカルスタッフ間ではお互いの給料金額を知っている。
- 有給休暇はきっちり使い切る。
- 日本人の考え方より合理的な考えを持っている。
- 転職で辞めても、また戻ってきたりする。(そしてさらに辞める例もちらほら)
- スケジュール感覚は。。。。。。
- 「お疲れ様」を言い合う習慣が無いので、いつの間にか帰宅している。
- 忘年会やその他の会社イベントには積極的に参加する。
- 仕事より家族優先。(日本人の想像をはるかに超える)
- 出産後、女性がすぐに職場復帰している。
駐在員としてマレーシアへ来ている日本人の多くは、どのような形であれ、管理職またはそれに準ずるポジションでの業務だと思います。
基本的にローカルスタッフは、年上や職位が高いリーダー的存在の人間へは忠実と言えます。的確な指示さえ与えれば忠実に仕事を完遂させようとがんばります。
良くも悪くも素直な性格(あくまでオフィスで見ているに限っては)で、明るい性格のスタッフが多いです。
結論としては日本のオフィスにいるよりはギスギスせず仕事ができる環境かと思います。
あとは余談ですが、社員証や組織表に表示されている顔写真、何年前の?ってなやつが多いです。もはや本人かどうかすらわからないくらい(笑)
2.駐在員として大変なところ
①組織作り
ある程度の人数で構成されている会社であれば、ビジネス環境や会社方針によって、会社組織や各部署の組織を最適化する必要が出てきます。
ただ、これが一筋縄にはいきません。
実際に私もそのような立場で組織再編などに携わりましたが、以下の部分が障壁になることが多いです。
- 現職より給料が高いオファーがあれば、進行中のプロジェクトに重要な役割で関与していても平気で辞めていく。
- 自分が想像していたキャリアパスが叶わない、または自分のやりたい部署や仕事に関与できないとわかった時なども平気で辞めていきます。
- 自分より年上の社員を管理したがらない。
- 多くのマレーシア人が温厚で控えめな性格であるため、リーダーになりたがらないスタッフが多い。
マレーシアでは、新卒で入社しても、よほど思い入れがない場合には、3~5年で転職していきます。(特に若い社員)
1つの会社しか経験していない人はほとんど存在していないのではないでしょうか。
転職は悪いことではなくて、「キャリアの積み上げ」であり、特に日系で就職経験があるという実績を踏み台(?)に他社へ身軽に転職していきます。
実際にそのほうが給料の上がり方が早いです。
よって、これらのことを頭の片隅に置いた組織作りを考える必要があります。
「基本に忠実に」かつ「合理的」に解決していくしかないと思います。
具体的にどうするか?
- できる限りコミュニケーションをとり、感じている不満や、スタッフの描くキャリアマップを聴く。
- 実力主義を濃いめに反映させた給与システムにする。
- 日本の人事システムで評価しない。
- 新卒ではなく経験者を採用する。
- 会社として手放したくない有能な社員へは手厚く褒賞する。
また、次の項目については組織化する時のポイントの一つになります。
- 業務の自動化
その理由の一つとして、多くの若い社員が転職を繰り返すことが挙げられます。
一番育って欲しい層がいつまで経っても新人同様で、中堅層が育たず、更にその上の層が苦労する構図から抜け出せなくなります。
辞める⇒採用する⇒教育する⇒辞める⇒採用する⇒。。。。
この繰り返しで非効率です。
せっかく教育した社員が辞めていく。
つまり、入社3年目までの社員が担当しそうな業務を、部分的に自動化することが最重要と考えました。仕組化でも良いと思います。
誰がやっても、アウトプットが同じになるようなシステム構築。
これをどれだけ実現できるかがカギになります。
実際には、マレー系と中華系の在籍人数比率や、工場勤務かオフィス勤務かでも組織化手法は大きく変わってくると思います。
どちらにせよ簡単にはいかないことを実感すると思います。
②日本本社との調整
- 本社からの出張者への世話。(上層部が来るとなるとホテルの手配から、送迎、夜の懇親会用の会場予約など、業務外の雑用が増える)
- 各種報告用の資料作成。
- 本社と合同で案件を受注した場合の範囲調整/利益分配調整。
- 日本本社からの通達を英訳し、ローカルへ周知徹底させる。
- ローカル社員からのリクエストを説明し、納得させ、行動させる。
- 日本本社のシステムへのアクセスが制限されるため、都度依頼する必要がある。
日本との時差が1時間しかない部分に関しては、やりやすいところ。
③ローカル社員とのスケジュール感覚のズレ
結論として、これはもうしょうがないと割り切るしかないです。
電車がたった3分遅延しただけで、メッチャ謝罪アナウンスが車内とホームに流れる日本の感覚を押し付けても、「暖簾に腕押し」です。
良い悪いの問題ではなく、生まれ育った環境の違いなので、完全是正は無理です。
特に客先も日系企業の場合、日本人駐在員ばかりが焦って冷や汗かきながらスケジュール順守しようと調整しますが、ローカル社員にはその温度感はなかなか伝わらないです。
もちろん、数%の社員は日本のやり方を理解しており、他のローカル社員を引っ張ってくれます。ただ、客先がローカル企業の場合には、お互いがズルズルとスケジュールを遅延しがちになります。
なので、このタスクをいつまでに仕上げるべきだと、明確に指導する必要があります。さらには、そのスケジュールでタスクを進めるためには、いついつまでにこの部分を終わらせておく必要があります。と具体的に細分化した指示をする必要です。
ただ残念なのが、ここまで指示して70%程度の完成度の場合が多いです。
よって、全体のプロジェクトスケジュールを考えた場合、日本で考えるよりも多めの余裕代を設定しておく必要があります。
3.駐在員としてここに気をつけています
- 「日本ではこうだから」を安易に口にしない。
- 厳しめに指導する必要がある場合には、本人と別室で個別に。
- 良い部分は具体的に説明し鼓舞する。
- 宗教上の慣習については深入りしない。
- 断食期間中の労働スケジュールに配慮する。
- ローカル社員主体で仕事を進めさせる。
- トラブル発生時には積極的に関与し、解決策を共に探る。
- ローカル社員ファーストの精神。
様々な民族で成り立っているマレーシア。
宗教も様々。
当然、習慣や文化、考え方も様々。
日本人の感覚(常識)を、モンサシの基準にしてしまうと、なかなかうまく行かない場面に直面します。
基本的にローカル社員の考え方を尊重しつつ、締めるところは締める、など柔軟に対応することでうまく行くケースは多いです。
ローカル同士(客やサプラーヤーも含め)でのやり取りに、日本人が入ることによってスムースに進まなくなるケースも少なくありません。
国は違えど、同じアジア人同士、話せばわかる!!
ホント、これです。
今回はここまで!!